セッション
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土と音楽 中澤 きみ子 氏
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私は 1950 年に長野県上田市に生まれました。今年で 65 歳、5歳からバイオリンを弾いていますので 60 年弾いてきたことになります。60 年ですよ!バイオリンばかりに時間を費やしてきました。あぁ、私の人生、これでよかったのかなあ、なんて思ったりもしますが、私が 60 年をバイオリンと共に生きることになったのは、100 年前の私の祖母の結婚にさかのぼります。祖母の嫁入り道具の一つがバイオリンでした。バイオリンはいつも囲炉裏にかかっていました。私がバイオリンを手にするようになったのは、戦後の父の「思い」を経てのことです。
私は母のおなかにいるときから、そんな父の思いを感じて育ちました。父は誰に習うともなく我流でバイオリンをひきました。さらさらと水の流れる河原の横に腰かけて、父がバイオリンを弾き、その横に座った母が歌う。澄んだ美しい空気を吸いながら、水のせせらぎの音と一緒に奏でられるバイオリンの音。なんて幸福な時間なのだろうと思います、今はもうそんな環境がないでしょ。
ちょっと話がそれますが、いまも私は、マシュマロやシュークリームを見ると、つい買って食べたくなります、当時、洋菓子にあこがれていた気持ちがいまだに抜けないんです...、あ、それはただの食いしん坊だよって言われちゃいそうですね。子どものころのうちの食事は、野菜とお米とお餅だけでした。だから、子どもの私には洋菓子が本当にキラキラして見えていたんです。 → 次のページ
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