TAJIMA
CONNECTION
パスワードを忘れた方
セッション
歌舞伎の魅力  水口 一夫 氏
ページ : 123456789
5

永楽館との関わりは、最初、えらい古い芝居小屋があると噂に聞いて見に行ったのです。復元の話がまだなかったころで、建物はブルーシートに覆われていて。ブルーシートの隙間からちょっと覗くと、ごちゃごちゃーとしていて、とても汚かったのを覚えています。そのうち、どうも市役所が買い取って直すらしい、との話が入って来て。これは見に行かなあかんな、ってことでまた見に行きました。そして非常に立派に復元された。

復元工事がはじまるころから、市の文化財担当職員の K さんとやりとりをしていました。「芝居小屋のこけら落としは、三番叟と決まっとる、三番叟をせなあかんで」などと言ってね。そして、いよいよ、永楽館の「顔」ともなる役者を誰にするか決めるとき、僕の頭の中では、二人の候補がありました。亀次郎(市川亀次郎)と愛ちゃん(片岡愛之助)です。どっちがええやろなあ。職員のKさんは、「水口さん、すべてお任せします、よろしくお願いします」と言われる。うぅぅむ、出石は関西やし、やっぱり、愛ちゃんやなあ、愛ちゃんを座頭にして、若手の壱太郎(かずたろう、中村壱太郎)さんらを配するのがええな、と思った。

永楽館が復元して最初の公演の年、愛ちゃんが来る!って言っても、出石のみなさん、だあれも愛ちゃんをご存知なかったと思いますね。愛之助?誰?って思っておられたはずです。当時は愛ちゃん人気なくてね、僕も不安だった、ああ、永楽館、いつまで保つやろうなあ、、と。そしたら、TVドラマや私生活やらで、あれよあれよという間に、ものすごい人気が出てスターになっちゃった。よかった、と思っています。

愛之助は、初めてやる演目を必ず永楽館でやります。毎回、出石の永楽館で、はじめて演じてみるんです。自分を育ててくれる出石のお客さんの反応を、最初に見て試している。その、愛之助の心意気を、みなさん、どうか、かってやってください。

© TAJIMA CONNECTION