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本の未来について  幅 允孝 氏
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中田)いやあ...、なんとも、幅さんの本の知識の“幅”広さには、本当にびっくりです。私は、幅さんが打ち合わせでお話ししてくださった、ワカサギ釣りの例えが、非常に分かりやすかったので、そのお話を皆さんにもお伝えしたいのですが、ワカサギ釣りをしている人は、その小さな穴からワカサギだけを釣ろうとしている。けれど、そのワカサギがいる海は、非常に広くて、その穴の下だけでなくずーっと横につながっている、その海には、いろんな生き物がワカサギのすぐ隣にいるんですよね。しかし、ワカサギ釣りをする人は、その広大な世界について知ることがない。ワカサギ以外の魚や海藻や多くの生き物について、知ることがない。

幅)ええ、そうですね。検索型の世の中では、なんでもまず「検索する」ことで始まります。検索することが世の中の基本になっていますから、自分が知ってることしか検索しない。ワカサギを釣ることはできるんですが、その他の、自分の知らないところとの接点が持てないでいる。だから、知らない本を届ける僕たちの仕事には、大きな可能性があると思っています。

僕は仕事の依頼を受けたら、まずその関連する分野の本をとにかく集める。本屋やまちを歩く。ちょっとでも何かひっかかったら買ってみて読む。大量すぎて読めないときは、スタッフにも分担して読んでもらう。

アマゾンで本を買うとき、「この本を買った人は、こんな本も買っています」というレビューが出ますよね。知らない本に出合う場はネットの世界にもある。しかし、アマゾンがおすすめしてくれる本は、「売上数字の大きいもの」ばかりです。だからこそ、僕たちの出番があるわけですが、保有する本の品数でいけば、アマゾンにかなう本屋さんはありません。僕が大切にしているのは、書き手の精神を受け渡すことです。本は個人が書いて、個人が読むもの。精神を受け取ることは、読み手にとって非常に個人的なことです。すごく繊細でプライベートなことなんですよ、読書って。数字の大きさでは決して測れないものです。

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