セッション
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新しい広場をつくる 平田 オリザ 氏
12. 宮沢賢治の農民芸術論で話を終えよう
~誰もが芸術家。どんな小さな村も世界の中心~ さて、そろそろ時間がなくなってきたんだけれど、最初に朗読した宮沢賢治の農民芸術論にもう一度戻りたいんですね。賢治は、農民自身が自分の人生を決めること、自己を決定する力を持つこと。これこそが大切だと言っている。一人ひとりが自己決定して、地域の豊かさをダイレクトに世界に発信していくことだと。 これまで、地方都市がどれだけ「中央」に供給してきたか、供給し続けてきてしまったか、どれだけ東京を下支えしてきたか。それでいいのか。賢治はすでに今の現状を見越して、警鐘を鳴らしていたんですよね。 地方に雇用がないから若者は戻らない?違う、帰らないのは「つまらない」からです。地方を、自分が住んでいる場所を、「つまらなくなく」すればいいんです。若い人たちは、東京で子育てすることはもう無理だ、ひどい環境だって、知っています。東京だけが住みやすいなどと、もう若者は思っていない。 小豆島は今、子育て世代の若い人たちがたくさん移住してきている。Iターンがものすごく増えています。仕事があるからじゃない、おもしろそうだから、です。瀬戸内国際芸術祭、あのイベントの成功で、瀬戸内の小さな島々は「文化」発信できるおもしろい地域として若者に認識された。それまでは、素麺かオリーブ油くらいしかないと思われていた小さな島です。ここに、ヘンな人、面白い人たちが集まってきている。小豆島が世界の中心なんです。私もあなたも、誰もがなにかを発信していく芸術家の一人なんです。 ということで、一人ひとりが「芸術家」なんだということをここでみなさんと噛み締めることで、これからの未来があるのだとお伝えして、今日のお話を終えたいと思います。 どうもありがとうございました。 |