セッション
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有機 ✕ 地域 ✕ 伝統の醤油づくり 浄慶 拓志 氏
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醤油の使用量は減少傾向にあり、1人あたりの使用量は年間1.9リットルしかありません。これだけの量のために、そこまで安いものを求める必要があるのでしょうか。調味料を見直せばサプリも要らなくなります。高くてもちゃんと作った調味料を使うことで健康を取り戻せます。大手5社の生産能力があれば、それだけで日本の需要は十分まかなえますが、伝統を守り、未来に残していくことが私たちの存在意義であり、使命であると考えます。 原材料で比較しても、脱脂加工大豆を使用したものが83.6%あります。脱脂加工大豆とは、溶剤(塩酸)に溶かして大豆油を抽出した残りかすのことで、家畜のえさとなります。これに対して、丸大豆(普通の大豆)を使ったものは16.4%、うち2.9%が国産大豆で、さらに国産有機の大豆を使ったものとなると、前述の10社ぐらいしかありません。 海外の大豆は、主にアメリカ、ブラジル、アルゼンチン、中国から輸入されます。醤油は「遺伝子組み換えかどうか」を表記しなくてよいことになっているため消費者には見えにくいのですが、ほとんどが遺伝子組み換え大豆です。実は、日本は遺伝子組み換え作物の輸入量が世界一多い国なのです。西洋は麦を主食としているため、麦への遺伝子組み換えは許されていませんが、家畜のえさとなる大豆では許されているのです。さらに、収穫後、輸送中に直接作物に農薬をかけるポストハーベストの問題もあります。自給率は大豆で7%、小麦で11%しかありませんので、海外からの輸入に頼らざるを得ません。 日本では人口減少が問題となっていますが、世界的には人口爆発、食糧不足が起こっています。海外からお金に物を言わせて食糧を奪っている現状を改め、自分たちが食べるものは自分たちで作る、国産原料のものを選ぶことを勧めたいと思います。 大徳醤油は、「有機」(安全性日本一を目指す有機JAS認定醸造所)、「地域」(良いものを作っている但馬の生産者とのコラボ)、「伝統」(未来の子どもたちに残していく)の3つに取り組んでいます。有機JAS認定工場は、有機JAS原料を95%以上使っていることを国が認定するものです。大徳では有機の意味である「機有るべし(ときあるべし)」という国産有機醤油も作っています。 但馬の有機農家とのコラボでノンオイルドレッシングなども作ったり、食料品以外の都市部の店舗とのコラボも行っています。商品を通じて地域の生産者を紹介していきたいと考えています。また、漁業、農業とのコラボで、水産廃棄物として大量に捨てられる魚のはらわたを利用した但馬の魚醤プロジェクトにも取り組んでいます。ちゃんと分解・発酵するので生臭くない魚醤ができます。植物性のうまみと動物性のうまみの両方を持つのが特徴です。 発酵と腐敗は紙一重で、人間にとって良いものは発酵、悪いものは腐敗と呼ばれます。昔ながらの蔵には数えきれないほどの微生物が住み着いていて、昨今流行りの清潔・除菌とは反対の世界です。除菌して無菌状態になった中に悪い菌が入ると一気に悪い菌が繁殖してしまいます。いろんな菌がいることが、外から菌が入っても抑制作用が働き、悪さをさせなくてすむのです。 |