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有機 ✕ 地域 ✕ 伝統の醤油づくり  浄慶 拓志 氏
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但馬コネクションの和食シリーズ第3弾は「醤油」。養父市にある大徳醤油の4代目、浄慶拓志さんに、大徳醤油の取り組みを中心にお話を伺いました。

大徳醤油は1910年創業の老舗です。今ではとても少なくなった、昔ながらの醤油づくりをしている醸造所の1つです。自然と生き物(微生物)と共生しながら、ゆっくりと時間をかけて無添加の調味料を作っています。

稲の裏についたカビを培養して食品に使うという「麹」の文化は、もとは中国から伝わったという説もありますが、日本の風土のなかで独自の発展を遂げ、日本の食文化の一番の功績、特徴となりました。日本列島は地球上で最も麹菌が繁殖している土地です。これは天の恵み以外の何物でもありません。醸造の精細さには日本の四季が活きています。

麹を利用したものには、酒、みりん、酢、味噌などもあり、そのほとんどが米麹を原料に混ぜて作りますが、醤油だけは原料である大豆と小麦をすべて麹にしてしまいます。もろみ状態で1~2年置くうちに麹の酵素が働いてたんぱく質やでんぷんを分解していき、分解物がうまみとなって複雑な味が形成されます。すごい技術です。

昭和の中頃までは全国に1万軒、1つのまちに1つの醤油蔵があるような状態でしたが、高度成長期にスーパーが出現して状況が一変。その頃の醤油は高級品でしたが、大手の醤油メーカーがシェア獲得のためにスーパーの客寄せの道具として醤油を「特売」で売り出したのです。今では、ひどいときには水の半額ほどで売られていることもあります。

大手の醤油は、2~6か月という短期間で発酵させる「速醸」というやり方でつくられます。何年も手間暇かけてつくっている中小の醸造所は大手と勝負できなくなり、醸造せずに瓶詰めだけする形でしか生き残れなくなりました。現在、醸造所として登録されているのは1200軒まで減ってしまいましたが、この中でも自社で醸造しているところはわずかしかありません。キッコーマン、ヒガシマルをはじめとする大手5社がシェアの50%を握り、準大手と呼ばれる15社で25%を占め、残りの25%を1200社で醸造しています。このうち、うちのように国産有機原料で醸造しているのは10社だけです。

本来、醸造された醤油の味は、隣の樽同士でも違ってくるものですが、大量生産の醤油は工業製品並みに均一な味に仕上がります。かつての日本の調味料には、分解、排出の力がありましたが、速醸された醤油は全然別もので、そういった本来の力は失われています。

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