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若者を地方に呼ぶ方法  辻 隆 氏
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■儲かるシクミ

シクミは単純なほど儲かります。例えば、ビジネスホテルのシクミは、一番高給取りの「支配人とシェフがいない」ことです。星野リゾートのシクミは、「No.1の立地、No.1のハード、No.1の宣伝広告」でしょう。TUTAYAは、本屋でも音楽業界でもありません。1000円のCDを1日100円で貸す「金融機関」ですね。

マックアースは、スキー場は赤字でも、抱き合わせのホテルで儲けるシクミになっています。実は、クロスプロジェクトグループは、スキー場で唯一儲けている会社です。そのコンセプトは「お祭り」です。

1シーズンに3~4回スキーに行くお客さんをA、1~2回しか行かないお客さんをBとしましょう。日本全体のスキー場の来場者数を見ると、AとBがほぼ1:1ですが、実は売り上げの80%を占めているのはBなんです。Aの人の方が声が大きいので、スキー場はAの声を聴いてしまうのですが、Bの人たちにとって、例えば「雪質」とかはどうでもいいんです。

1~2回だけ来る人にとって、スキーはお祭りと一緒です。つまり、USJ、ディズニーランドが最大のライバルなのです。年に一度行く人にスキー場に来てもらい、0回の人にもアプローチします。実際、USJに勝てるのは、関西ではスキー場だけです。USJの一番空いている時期はいつでしょう?1~2月なんですね。寒いんです。寒いときに人を呼べるといえば、スキー場です。寒いときに子どもを連れて行くところはないか?しょうがないからスキー場にでも、というところに徹底的にアプローチをかけます。

儲かるシクミは、「リフト < レンタル・食事」という値段設定です。このシクミがあるので儲かります。当社はスキー業界で初めてフリーミアムを導入しました。つまり「ゼロ円」です。

一般のスキー場では、リフト券として3500円ほど取る分、ほかを安めに設定していますが、当社では、リフトをタダにする分、お食事とレンタル料を高めに設定するなどして、全体で儲けています。高い設定にしているので、レンタルはどんどん新しくすることができますし、リフトをタダにしても十分なんです。お祭りなので、クレープなどのおやつも買ってもらいます。

■地域が幸せになれるシクミ

私たちは、地域に還元できるよう、すべて現地法人を作って運営しています。

実は、白馬に移住して少し経った頃、どのくらい住めば「よそ者」と思われなくなるかと尋ねたんですね。すると、「今はまだ”流れ者”。孫の代になったら地の者と認めてもらえるだろう」と言われました。白馬はとても貧しい村だったのが、スキーのブームが訪れて豊かになれるのかと思ったら、脱サラペンションが現れ、そのうちに東京や大阪のリゾート会社がやってきて利益を全部外へ持って行かれるようになりました。

クロスプロジェクトグループの場合、スキー場の売り上げは現地法人に入るため、地域に法人税が入ります。クロスプロジェクトグループ本体にはスキー場の売り上げは入らないんですね。

これは根深い問題で、実はどこででも疑われます。「軒を貸して母屋を取るのか?」と。それほど、地方は搾取されてきました。自分たちの魅力に自分たちが気付かないからです。

実は、神鍋にはタイムリミットが迫っています。「未来がある」と思う地元の人がいなければ、数年のうちに他所からやってくる人が持っていってしまうでしょう。

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