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日独外交通訳の現場から  ベアーテ・フォン・デア・オステン 氏
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ベアーテ)私は高校時代から外国語が好きでした。この頃は英語やフランス語でしたが、文学を原語で読むと別世界が開けることに気がつきました。ぜんぜん違う空気に触れることができるし、外国語を話すと、別の自分になれる気がします。役者のように。思考レベルでも表現レベルでもその国の人になったかのようになれますし、声もゼスチャーも変わります。そして、いろいろな体験ができて人間として成長するチャンスがあると思いました。また、いろんなやり方や考え方があると知ることで世界が広がると思いました。

日本語を選んだのはまったくの偶然でした。外国語は大人になってからでは勉強し始めるといくら頑張ってもパーフェクトにはなれません。また、ヨーロッパにはバイリンガルで育った子がたくさんもいます。そこで、競争率の低い(笑)エキゾチックな言語を選ぼうと思いました。ちょうど大学時代に『将軍 SHOGUN』という映画が流行り、リチャード・チェンバレンのファンだったので、テレビで見ることにしました。すると日本語の響きに魅了され、「明日から日本語を勉強しよう」と思ってやってみたのが今につながっているのですが、日本語を選んで本当によかったと思います。私にとっては日本語に出会えたのが最高の幸せです。もしかすると前世は日本人だったかもしれません(笑)。パーフェクトではありませんが、とても自分に合っていると思います。響きがきれいだし、曖昧さや丁寧さも好きです。

外国語をある程度使えるようになるまでには数年かかります。私は1年間日本に留学しましたが、ドイツに戻ったとき、ちょうどベルリンの壁が崩壊しました。全世界からテレビ局などが殺到し、突然たくさんの通訳が必要になったのです。大学の学生を募集することになり、初めて通訳をする機会をいただきました。今から考えるとすごく下手でしたが、やってみて通訳という仕事にとても魅力を感じました。政治家、しかも普通なら絶対に会えないような重要な人物に実際に出会い、いろんな場面に参加できると知って、いつか東京のドイツ大使館の通訳翻訳部で仕事をしたいと思いました。

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