セッション
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日菓のしごと、きょうの和菓子話 日菓
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甲斐:日菓さんの本、今日は会場にもありますので、ぜひ手にとってご覧ください。そろそろ時間が、、、えと、会場から何か質問はありますか? 参加者:和菓子は具体的な形で表現しない、写実的な表現を避けると聞いたことがあります。実際、京都の和菓子は、抽象的な形が好まれているように思いますし、ちょっとした色や意匠で季節の花や言葉を見立てているものが多いように思います。その点、何か気にして創作されていますか? また、従来の和菓子の味から大きく飛躍した斬新な味の和菓子も、ちらほら見るようになりました。新しい時代の味をつくっていくことについてのお考えはありますか? 内田:そうですね、確かに、特に京都の和菓子は抽象的であるという傾向がありますね。それが伝統であるというか。私たちは2人ともそれぞれに京都の和菓子店で学んで修行してきたので、その辺りの感覚は自然に身についているように思います。「京都で和菓子を作るからには、何が何でも抽象だ!」とか考えたりはしていません。食べやすいように、おいしく見えてほしいという気持ちの方が強いです。その意識が、自然と抽象を導いているという気もします。タイトルと合わせて、その抽象さを楽しんでもらえたたらいいなと思います。
参加者:京都という和菓子の最大の聖地で、若き女性の創作ユニットとして、きら星のように登場され、お茶の専門誌「なごみ」で連載を持たれたり、お茶会のお菓子を日菓さんに依頼することが一つのステイタスであるような流行というのか、ある一定の「地位」というものを確実に築いて、一目置かれているようになられていると思っています。本当に素敵だなあと思います。これからの活動についての展望はありますか? 杉山:ありがとうございます。恐縮です。まず、二つ目の質問について。その質問、よくいただくのですよね、、、「日菓さんの肩書きはなんですか?」という質問と同じくらい、答えにつまって困ってしまう質問の一つです(笑)。「和菓子職人」というには尻込みしてしまう、「和菓子アーティスト」というにはあまりにも気恥ずかしい。うーん、、、まさにちょうどその中間、なんですけれどね。そうとしか言えないんですよね。
今述べたことは、一つ目の質問の答えにつながります。「私たちが日本の和菓子を変えてやる!」「新しい伝統を創造する!」なんて、かつても今も思っていなくて、本当にそんな意識は全くない(笑)んですね。自分たちの暮らしの延長線上でお菓子をつくることが、私たち2人にとって自然であったし、必然であったし、そのことが新鮮な悦びに満ちたものだったんです。 甲斐:まさに、今お話されたことが全てですよね。「日本の和菓子はさー、~で、~、だから~しなきゃならないんだよー」とか、そんなこと言わないわけです。そんなこと言わなくても、お二人の鋭い感性はちゃんと言葉をとらえて、それを形に昇華させて、「和菓子」という表現にして世に出されている。そして、そのことが、「味だけじゃなく、言葉だけじゃなく、五感で楽しむ」という京都の・日本の和菓子の伝統をしっかり受け継いでいることにつながっている。お二人の感性のままに楽しみながら無理なく続けて来られたことが、和菓子の未来を確実につくっているのだということ。これ以上の「クリエイティブ」はないと思います。この点は、もう本気で、誰にもマネのできない素晴らしいところです。これからの日菓さんの活動、本当に楽しみで注目したいと思います。 というところで、終わりの時間です。お二人にどうぞあたたかい拍手を! |