セッション
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いのちのヴァイオリン 中澤 宗幸 氏
4. 「ストラディヴァリウス」について
それでは次に、ストラディヴァリウスとは何ですか? はい。アントニオ・ストラディヴァリ。イタリアが生んだ天才です。彼は93歳まで生きました。そして、その間に、なんと3000挺の楽器をつくった。ヴァイオリンだけでなく、マンドリン、ギター、コントラバス、ヴィオラ、チェロ・・・。いくら93歳まで生きたからと言ってもこれだけたくさんつくるのは難しい。きっと、優秀なお弟子さん達がいて、「これはいい」と認めたものには自分のラベルを貼ったのだろうと思います。 中澤さんの奥さま・中澤きみ子さんはヴァイオリニストでらっしゃいます。ストラディヴァリウスを弾いておられますよね。 ストラディヴァリウスは、とても私たちの買えるものではありません。妻が現在弾いているのは、世界の5本の指に入る素晴らしい名器ですが、貸与されたものです。カレー専門店の「CoCo壱番屋」ってあるでしょう、そのカレー屋さんから大切にお預かりしているものなのです。(会場、どよめき) へえ、それは知りませんでした。今度カレーを食べに行かなくちゃいけませんね。ところで、ストラディヴァリウスの音は、どうスゴイのでしょうか。 いいことを尋ねてくださいました。ストラディヴァリウスのことを語るのに、もう一人ご紹介しなくちゃなりません。アントニア・ガルネリです。ガルネリもアマティの弟子でした。 一方、ガルネリは46歳で死んでしまう。そしてその短い人生は波瀾万丈でした。大酒飲みで、ケンカはする。しかし、この起伏の激しい人の生み出すヴァイオリンの音がね、どこか憂いを帯びた音なんです。仏教的な無常観、どんな人も包み込んでしまうような音、全ての哀しみや苦しみを包み込んでしまうような音。だから東洋人はガルネリに惹かれる。実は私もそうです。私たちの年代はガルネリが好きなんですね。けれど、ひょっとしたら、今の若い人たちはガルネリじゃなくて、ストラディヴァリウスに惹かれるかもしれませんね。 → 次のページ「5. ヴァイオリンとの出会い(生きることと音楽 ①)」
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