セッション
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植物から但馬を見てみると 菅村 定昌 氏
3. 但馬の植物
但馬には豊かな自然がありますが、それは、豊かで多様な景観があるからです。それぞれの景観の場所にはその景観固有の生きものや植物が生きています。 原生に近いブナ林やトチノキ林がごくわずかにあります。原生林を伐った後に生えた状態のよい二次林もあります。岩場、源流部、滝、山間の貧栄養湿地(但馬にわずか数か所)、草原もあります。草原は茅場として活用されて維持されてきましたが、今はわずかなものが火入れによって維持されているだけです。溜め池もありますが、但馬には100個ぐらいしかありません(兵庫県は日本一で5万個)。川には、河畔林、丸石河原、広いヨシ原、オギ原があります。人工的な草原である堤防もあります。河畔林は普通なら治水上、河川管理者によって真っ先に伐られているはずですが、円山川の場合、たまたま民地で権利関係が難しいため残りました。今では円山川の河川整備計画に「守る」と書いてあるので守られるでしょう。洪水による破壊で原野環境も生まれます。海岸には砂浜も礫の浜も岩場もあります。人間の手の入ったビオトープ、耕作放棄田、額縁休耕田といわれるものもあります。このように多様な環境だからこそ多様な生きものが生息できています。 ザリコミ、キビシロタンポポ、モミジカラマツなど近年新たに発見された種もまだまだあります。中にはイソスミレ、ウスゲチョウジタデなどのように兵庫県の植物を一覧している『兵庫県産維管束植物』には記載されていないにもかかわらず他の文献には記載されていたようなものもありました。これは植物を研究していてもいろいろな分野があって、横のつながりを欠いていて起きたことです。調べてみると確かにあり、標本になりました。 最近、兵庫県新産とか再発見とかの種を複数発見されているのはIさんです。もともと植物に関心のなかった人ですが、定年退職後の趣味で植物の写真を撮られるようになりました。但馬の自然がまだ豊かであり、毎日、山に入り続けると思わぬ発見ができるという実例です。 遭難しても誰も絶対来ないような深い山の崖を上って多くの稀産種を見つけてこられるMさんもおられます。人のまず行かないような所は各地に残っているので、兵庫県新産種はまだまだ出てきそうです。 → 次のページ
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