セッション
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炎のチャレンジャー 美藤 定 氏
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中田)第28回但馬コネクションへようこそ。28回ともなると、裏話もたくさんございます。毎回、どんなテーマでいこうか考えるんですが、そちらで考えてと言われる方もあれば、一緒に考えたり、ご本人が「これで」と指定されたり、ゲストの皆さんそれぞれなんです。「どうしましょう?」と問い掛けると、今回はご本人から「炎のチャレンジャー」でいきましょう、と豪速球が返ってきました。 皆さんよくご存知の美藤さんですが、どんなチャレンジをされてきたのか?スゴイ、スゴイとはよく聞きますが、何がいったいスゴイのか、まず最初にお聞きします。その後で、これまでの経験や人生哲学を聞いていきたいと思います。 世界一のクオリティの製品とお聞きしていますが、何がスゴイのか、その辺のお話から伺いましょう。 美藤)パリに行ったとき、メートル原器を見ました。19世紀、フランスの議会で考えた尺度の単位です。それまでは考えたこともありませんでした。尺度というのは絶対的なものと思っていましたから。いろんな国がそれぞれの尺度でやっていたけれど、それではやりにくいと、大航海時代に統一した尺度を決めたんですね。決め方もおしゃれです。パリから北極までの距離の1万分の1でどうだろうと。実際には、スペイン・バルセロナまでの距離を測定しました。世の中の尺度や価値観というのは誰かが考えて作ればいい。それに合理性があれば浸透するんだということですね。1983年に帰国してBITO R&Dを始めたのですが、世の中に適当な尺度がなかった。よく考えたら、みんないい加減にやって評価してるんです。そこで私が考えたのが、JBスペックという標準です。馬力やスピードなど数値で表現できるものは簡単ですが、良いもの、心地よさというものには単位がない。それを自分で考えて製品作りをしています。 中田)スタンダードを作っちゃったというのがスゴイですね。そこに思い至るというのはちょっとないのでは。世界基準を自分で作ったのが美藤さんのスゴイところだったんですね。 今日は、美藤さんの製品を持ってきていただいたんですが、ここで、マグネシウム鍛造(たんぞう)ホイールについて教えていただけますか。 美藤)以前は鋳造マグネシウムのホイールが売られていました。これは、溶けたマグネシウムを砂型にいれて冷やすので、品質が良くないんです。いろんな国で頼んでみたけど、断られました。汚い、危険、コスト合わない。そこで、鍛造ならできるのではと考えました。作ってみたら、世界のどこにもありません。品質もずば抜けて良い。軽くて強くて精度が高く、デザインも良い。すぐにオートバイメーカーに採用されました。 中田)鍛造というのは、叩くんですか?刀鍛冶のように叩いて硬くする? 美藤)圧力をかけて分子をくっつけるんです。圧力によって分子配列が整然となり、強度が上がる。強度が上がると薄くできる。薄くできると軽くできる。鋳造のように、空気、いわゆる「ス」が入らないので、高品質になるんです。 中田)それは、鍛造屋さんで作ってもらうんですか? 美藤)技術はあるけど、製品を作っている人は意外と少ないんです。 → 次のページ
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