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セッション
人と人、人とモノを繋げる  甲斐 みのり 氏(文筆家)
1.私にとってのお菓子
2.私が愛する可愛いお菓子
3.お菓子の背景にある物語
4.お菓子を通して知る「美しき日本」
5.現代らしいお菓子の楽しみ方
1.  私にとってのお菓子

はじめまして、甲斐みのりと申します。文章でたくさんのお菓子をご紹介しておりますので「文筆家」と名乗っていますが、最近では、フェリシモや老舗のお菓子屋さんと組んで、お菓子に関する雑貨のプロデュースやバレンタイン企画など、本当にいろんなことをさせていただいています。

私にとってお菓子とは、食べることだけでないんです。お菓子の魅力に取りつかれてお菓子のことを仕事にしていますが、お菓子だけを食べたい!というよりは、お菓子の周辺にある様々なかわいらしいモノやストーリーに惹かれて、ここまで来たという感じです。お菓子の存在が私をとても幸せな気持ちにしてくれるんですよね。お菓子のことを考えていると、本当に幸せなんです。
子供のころは、お菓子が入っている美しい箱や、お菓子を包んでいる可愛らしい包装紙のほうがほしくてたまりませんでしたし、おやつの時間である「3時」がずっと続けばいいのに!と思っているような子どもでした。

「甘い架け橋」という本にまつわるお話をここで少ししたいと思います。京都にある六曜社というカフェをご存じでしょうか。六曜社の奥野美穂子さんと、ひょんなことから、互いにお菓子を送りあうことになったんですね。言ってみれば「お菓子文通」です。私も奥野さんも大のお菓子好き。これを奥野さんに食べてほしい、このお菓子を甲斐さんに知ってほしい、というお菓子を、互いに送りあったのですね。
私は東京に住んでいますから関東のお菓子を、奥野さんは京都にお住まいですから関西のお菓子を送り合いました。その、京都・東京間のお菓子のやりとりを、お菓子で綴る12か月の往復書簡としてまとめ、「甘い架け橋」という本にしたのです。
お菓子に互いの気持ちを込めてやりとりすることは、私にとってなんとも幸福なことでした。この奥野さんとのやりとりが、今の私を形成するうえでとても大切な出来事の一つになっていることは間違いありません。
この写真、「ほたるもち」といいます。とある初夏に奥野さんが送ってくださったお菓子です。私は、一目でこのお菓子の可愛らしさにやられました。わぁぁ、可愛い! そう思ったら、私はその感動を誰かに伝えて分かち合いたくなるんですね。すぐにお友達を家に招いてお茶会をしました。

現在、本でお菓子を紹介したり、いろんなお菓子屋さんとコラボしてお茶会を企画したり、お菓子を楽しく美味しく食べるためのグッズを企画したり、いろんなお仕事をさせてもらっていますが、私の仕事の根本には、可愛いお菓子をみんなに知ってほしい、その美味しさをみんなと分かち合いたい、という気持ちがあるんですね。その基本の気持ちを育んできた場が、奥野さんとの「お菓子文通」だったのかもしれません。

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