セッション
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音楽のちから 碓井 俊樹 氏
<演奏曲>
1. 『月光』 ベートーヴェン
2. 『キラキラ星変奏曲』 モーツアルト
3. 『パープル・ヘイズ』 ジミ・ヘンドリックス
4. 『フォーレのソナタより3つの楽章』(中澤きみ子さんとの共演)
5. 『ブリッジ』 坂本龍一
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さて、僕が、海外で演奏するきっかけになった出来事があります。そこには、恩師である中澤きみ子先生が深く関わっているのですが。大学6年生のときのこと、今から14年前ですね、ハイチ共和国に一緒に連れて行っていただいたのです。えと、このプレハブのような建物の写真は、ハイチの国際空港です。この飛行機が怖くてねえ、ガムテープが張ってあったりして。僕たちが乗ったすぐ後に落ちたりもしてるんですよ。 ※ここで、中澤きみ子さん、サプライズ登場! 中澤:そうなのよ、ハイチ、ほんっとに、大変なところでした。今のように情報が簡単に手に入らないからこそ、知らないからこそ行けた国でした。それに、私も若かったんだなあ!って思います、今ならいけないもの!ハイチは一つの島の半分なんです。島のもう半分のドミニカ共和国は、かつてのスペイン領でお金もあるのに、フランス領だったハイチは本当に貧乏で。 碓井:僕もハイチのことを知らなかったですよ。最初、タヒチだと思っていて南の島だあー!って喜んで勘違いしていたくらい。え?違うの?何?予防接種でデング熱対策とか必要なところ?そうなの?って感じで。 中澤:そうね、あんな炎天下の屋外で、木の下で演奏したなんて、後にも先にもないわね。聞いてくださってる方も、なんていうか、まっ黒で、農民の方がほとんどだから、もうほんとにまっ黒で。私たちもお風呂なんて入れなくて、まっ黒。でも、目の輝きが違った。楽器を弾きたい!って子どもがやって来るんだけれど、演奏のレベルは日本とくらべものにならないくらい全然ヘタなんだけれど、それでも、目の輝きは素晴らしかった。 ハイチからニューヨークに戻った時は、ああ、無事に帰ってこれた!って本当にほっとしちゃって。それでも、私たちのミッションはきちんと果たしたのよね。ミッションというのは、12本のバイオリンをハイチに持って行って、プレゼントしてくるってものです。籔蚊に喰われまくって、みんな順番にお腹をこわして、それでも、私たち、きちんと役目を果たして元気に帰ってこれた。よかったあ!って思いましたよ。それじゃあ、碓井くん、演奏しましょうか。ちょうど1カ月ほど前に、碓井さんと合わせたことのある曲です。ハイチの貧困の風景とは真逆の、フランス近代の美しい色彩を思わせる絵画のような、大人の恋愛の世界のような、意識の揺らぎそのままのような、そんな曲です。 → 次のページ
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